不安障害
パニック障害
突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をパニック障害といいます。
このパニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強くて、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、また発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。とくに、電車やエレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じて、外出ができなくなってしまうことがあります。
パニック障害ではまずはSSRIをはじめとする抗うつ薬と抗不安薬の一種であるベンゾジアゼピン系薬剤を用いてパニック発作を和らげていきます。薬が効き始めて発作が起こらなくなってきたら、少しずつ苦手なことに慣れていく暴露療法や呼吸訓練などの心理療法も併せておこなう場合もあります。
社会不安障害
大勢の人の前で発表や発言をするときに緊張したり、その場面を想像すると不安になるのは自然なことです。このような場面では緊張で手が震えたり、汗を大量にかいたり、声が上ずって頭が真っ白になった経験のある方も多いでしょう。通常は発表や発言が終わると不安や緊張は和らぎ、何度か発表や発言を経験していくうちに少しずつ慣れてきます。
しかし、このような状況で生じる不安や緊張と身体の症状が、会話や発言に支障をきたすほどひどく、その苦痛から社会的状況や人前での行為を避けたくなってしまい、その結果、社会生活に支障がでてしまう状態を社会不安障害といいます。これまで対人恐怖症、あがり症と呼ばれていたものもこの障害に含まれます。社会不安障害の患者さんでは周囲からマイナスな評価をされてしまう恐怖や周囲に迷惑をかけてしまう恐怖を根底に持っていることが多いといわれています。
社会不安障害の治療は抗不安薬という不安を抑える薬と、SSRIという心のバランスを整える抗うつ薬を中心として症状を抑えます。また、心理療法を行って、症状があらわれる原因となる行動を実際にすこしずつ体験し、成功体験を積むことで障害を克服するという治療法を用いる場合もあります。
強迫性障害
「ドアに鍵をかけたかな?」「鍋を火にかけたままかも」と、不安になって家に戻ったという経験は多くの方にあると思います。しかし、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまうことで、日常生活にも影響が出てくる状態を強迫性障害と言います。
意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。強迫観念、強迫行為に費やす時間が長時間になってしまうと日常生活に大きな支障をきたし、そのことで不安が強まったり、抑うつ的になったりする場合が多くみられます。
強迫性障害の治療はまず抗うつ薬のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)で状態を安定させてから、暴露反応妨害法と呼ばれる認知行動療法に入るのが一般的です。
身体症状症
身体症状症は患者さんの自覚症状に見合う身体的異常や検査結果がないにもかかわらず、痛みや吐き気、しびれなど多くの身体的な症状が長い期間にわたって続く病気です。患者さんの中には、体に力が入らくなったり、けいれん発作のような症状が出現したりすることもあります。症状は体のさまざまな場所に生じ、しばしば変化します。内科などで身体に関する診察を受けても症状が改善せず、症状が長く続くことで不安や抑うつなどの精神的な症状も生じることで精神科や心療内科に紹介されることが多い病気です。
ストレスが症状の出現に関連しているという考え方もありますが、必ずしもストレスが原因とは言い切れませんし、実際に脳の中で何が生じているのかは明確にはわかっていません。このような症状に悩まされている方は線維筋痛症と診断されることもあります。線維筋痛症は身体の特定の場所(18カ所)の圧痛点の存在などの診断基準が示されていますが、線維筋痛症と身体症状症の関係(同じ病気の違う側面をみているのか、違う病気か)はまだ議論の余地が大きいです。
治療に関しては「重大な身体疾患の証拠はないこと」を理解し、可能な限り普段通りの生活を送ること、症状が悪くなるきっかけや良くなるきっかけを明確にして症状が軽くなる行動を促すことなどが挙げられます。薬物療法は補助的ですが、ある種の抗うつ薬や抗不安薬が症状を和らげるために用いられます。