うつ病

うつ病とは

うつ病とは脳のはたらきに何らかの問題が起こることで気分の落ち込みや意欲が湧かなくなり、仕事や日常生活の困りごとが出てきてしまう状態です。うつ病はストレス以外にもからだの病気が原因となることも多く、原因がはっきりわからないこともしばしばあります。うつ病の症状は気分の落ち込みなどこころの症状だけでなく、食欲低下や疲労感などからだの症状も多くの人に認められるため、本人、周りの人もうつ病に気づかないこともしばしばあります。下記のような症状が2週間以上続いて、仕事や日常生活に支障がある場合にはうつ病の存在を疑う必要があります。

 

こころの症状

からだの症状

抑うつ気分

睡眠障害

不安・あせり

食欲の減退

遠くへ行きたい・消えてしまいたい

疲労感・倦怠感

興味または喜びの喪失

動悸・息苦しさ・口が渇くなど

意欲の低下・おっくう感

からだの重さや痛み

自分を責める

 

会話や本などの内容が頭に入ってこない

 

うつ病の治療

うつ病の治療には、休養、精神療法、薬物療法などがあります。
休むことは悪いことではありませんし、「何かやらなければ」とあせることもありません。休養をとることは、うつ病から回復するために非常に重要な第一歩です。
うつ病の精神療法は診察の中でうつ病についての安心できる説明や療養について医師と患者が一緒に考えて決定していくことが基本であると考えられています。少し専門的な精神療法としては認知行動療法、対人関係療法などがあります。仕事を持っている患者さんでは職場復帰を目的としたリワークも精神療法のひとつとして注目されています。これらの専門的な精神療法の必要性が高いと判断した場合には適切な医療機関などに紹介させていただきます。
薬物療法は、セロトニンやノルアドレナリンに作用する、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤)といわれる抗うつ薬がよく使われます。三環系や四環系と呼ばれる少し古いタイプの抗うつ薬も患者さんの病状に合わせて使用されます。不眠など睡眠の問題も合併している場合には睡眠薬も一緒に使われることが多いです。

 

躁うつ病(双極性障害)とは

躁うつ病(双極性障害)はうつ病と名前がとても似ており、同じ病気と勘違いしやすいですが、両者はまったく違う病気で治療薬も異なります。うつ病の主な治療薬は抗うつ薬ですが、双極性障害では主に気分安定薬と抗精神病薬が使われます。

多くの双極性障害の患者さんはうつ状態で受診しますが、その後、躁状態を発症してはじめて双極性障害と診断されます。そのため、多くの双極性障害患者さんはうつ病として治療されて病気が長引くことが多くみられます。患者さんは躁状態が軽度であれば調子が良く感じて気づかない場合も多いです。うつ病の治療が長引いている場合には過去の自分を振り返って下記のようなことがなかったか考えてみてください。家族に意見を聞いてみることも有用です。また、ご家族や親戚に双極性障害の方がいる場合には、参考に医師に伝えるとよいでしょう。さまざまな情報があると、より的確な診断に結びつきやすくなります。

 

躁状態の症状

うつ状態の症状

エネルギーにあふれ、元気になった気がする

気分が落ち込む

あまり眠らなくても平気

寝てばかりいる

アイデアが次々に浮かんでくる

やる気が起きない

おしゃべりになる

楽しめない

急に偉くなったような気になる

疲れやすい

怒りっぽくなる

なにも手につかない

すぐに気が散る

自分を責めてしまう

じっとしていられない

決断力がなくなる

浪費

死にたくなる

性的逸脱

食欲がなくなる

 

認知行動療法

「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいますが、認知に働きかけて、心のストレスを軽くしていく治療法を認知行動療法と言います。

うつ病患者さんに限らず、人は非常にすばやく、自分の意志とは関係なく自動的に湧き出る思考のパターンを持っており、これを自動思考と言います。うつ病患者さんでは自分、周囲、将来の 3つに悲観的な自動思考を持ちやすくなります。自分に対しては「自分はダメな人間だ」と考え、周囲に対しては「自分のように何の役にも立たない人間とつきあいたいと思う人はいない」と考え、将来に対しては「いまのこのつらい気持ちは一生続くだろう」のような考えです。認知行動療法では、つらくなったときに頭に浮かぶ自動思考を柔軟なバランスのよい新しい考えにかえていくことで、そのときどきに感じるストレスを和らげる方法を学びます。そして楽な気持ちでもっと自分らしく生きられる可能性がでてきます。

 

適応障害

適応障害は、ある特定の状況や出来事が、その人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのために気分や行動面に症状が現れるものです。たとえば憂うつな気分や不安感が強くなるため、涙もろくなったり、過剰に心配したり、神経が過敏になったりします。また、無断欠席や無謀な運転、喧嘩、物を壊すなどの行動面の症状がみられることもあります。

ストレスとなる状況や出来事がはっきりしているので、環境調整などによってその原因から離れると、症状は次第に改善します。でもストレス因から離れられない、取り除けない状況では、症状が慢性化することもあります。そういった場合は、認知行動療法やカウンセリングなどを通して、ストレスフルな状況に適応する力をつけることも、有効な治療法です。適応障害において、薬物療法は補助的役割でありますが、不眠症状がある場合は対症療法的に睡眠導入薬を処方します。また、不安や抑うつに対して抗うつ薬や抗不安薬を処方することもあります。