その他の睡眠障害
レム睡眠行動障害
睡眠はREM(レム)睡眠とNREM(ノンレム)睡眠に分けられます。REMは英語の”Rapid Eye Movement(急速眼球運動)”の頭文字をとったものです。いわゆる、夢を見ている状態です。一晩の間に3~5回、おおよそ90分間隔で出現します。
REM睡眠の特徴の一つは、脱力状態になることです。夢見に関わる脳の神経活動は高まっていますが、手足は脱力状態で、思うように動かせない「金縛り」が生じています。REM睡眠時、この脱力状態にならずに、夢の通りに行動してしまう病気がREM睡眠行動障害です。夢の内容次第では自分自身がケガをする、もしくはパートナーにケガさせたり、周囲の物を壊すこともあります。
通常、50歳以降に症状が目立つようになります。REM睡眠時の問題だけでなく、目が覚めているときでもにおいが分からなくなることや便秘が目立つこともあります。一部の人はパーキンソン病やレビー小体型認知症の初期症状として発症することがあります。そのため、これらの疾患の合併がないか、5年、10年単位の長期にわたって注意することが必要です。
治療は夜間の行動の危険性が低ければ寝室の環境を整えるだけで経過観察します。行動が激しい場合には、動きを抑制するために抗けいれん薬に分類されるクロナゼパムが使用されます。クロナゼパムの使用時には眠気やふらつきが起こりやすく、睡眠時無呼吸症候群がある場合には、無呼吸が重症化することもあるので十分注意して経過を見ていきます。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群は脚にむずむずするような、何とも言いようがない不快感でじっと座っているのが辛く脚を動かしたくなる気持ちが起こるため、むずむず脚症候群と呼ばれます。
この不快感は、「ヤキヤキする」「痛い」「しびれている」「むずがゆい」など人によって感じ方は様々です。安静時に出現し、動いている間は軽減することが特徴です。そのため、貧乏揺すりをしたり、歩き回ったり、さすったりしていることがあります。
夕方から夜間にかけて症状が強くなるため、しばしば眠れなくなります。眠ろうと床に入ると症状が出てきて、脚をばたばたさせたり、寝返りが多くなったり、または脚を叩く、マッサージする、といった行動に出ることがあります。寝付きの悪さだけでなく、寝ている間にも手足が勝手に動いていることがあり、途中で目が覚めてしまう場合もあります。
この病気の方には、周期性四肢運動と呼ばれる四肢の動きが多く観察されます。この現象は、自分で気付くこともありますが、正確に評価するためには睡眠時の検査(ポリソムノグラフィー)が必要です。
むずむず脚症候群の治療は多くの場合、ドパミン作動薬が有効です。ドパミン作動薬は、パーキンソン病に使用される薬剤ですが、パーキンソン病よりもかなり少ない量で症状は緩和されます。鉄の補充といった薬物療法も行われています。この病気は治療可能な病気です。完全に症状が消失しない場合でも、症状の軽減が可能です。
夢中遊行(夢遊病)
夜中、睡眠状態のままで動きまわってしまう。そんな状態を「夢遊病」「睡眠時遊行症」といいます。患者さんの多くは3歳~9歳ごろに始まり、通常は睡眠機能の発達にともない落ち着いていきますが、まれに成人でも発症します。動きはしっかりとしていますが、表情はうつろで、声をかけてもほとんど反応せず、目覚めさせるのは困難です。
具体的な行動には
- ベッド上で起き上がり、あたりを見回す
- ドアを開け閉めする
- クローゼットに入る
- 着替えて外に出ていこうとする
- 物置で用を足す
- 台所で何かを食べる
などがあります。
病気の名前には夢という文字が入っていますが、この病気はノンレム睡眠(夢をみていない深い眠り)の時に起こる事がわかっており、未熟な脳の睡眠・覚醒機能と関係していると考えられています。
治療としては一般的には症状でけがをしないように寝室の環境を整える、心身や生活のリズムの安定をはかるなどして経過を見ることが多いです。症状が重くてけがをするなどの場合には薬剤を使用することもあります。